テクノロジー 2026.06.04 遮熱率「S75+相当」と自信を持ってお届けできる。「SPACECOOL日傘 Type2」開発者インタビュー 安達 瞳(広報) この度発売した「SPACECOOL日傘 Type2」。この製品の開発担当者であるテクニカル本部・大杉亮輔に、日傘誕生に至るまでの経緯やSPACECOOL日傘の性能について語ってもらいました! 作るのには本当にいろんな苦労があったのだとか… でもこれだけは言えます。「これは日傘として、ほんまにええやつができた!」 日傘に使われている「ファブリックType2」ができるまで 日傘を作る前はもちろん、フィルムしかありませんでした。 その当時、導入を進めていた屋外機器ももちろんですが、なにより自分が暑い!何とか人を涼しくできるものが作れないかと考えたのが始まりです。 最初のファブリック(Type1)の試作品は、フィルムを生地に貼っただけの製品でした。 SPACECOOLの最高の効果をそのまま感じられるようにと生地化した製品で、布というよりかは、「手軽に持ち運べるフィルム」と言ったほうが良い製品でした。 当時その生地で作った服は、硬すぎて腕も動かせないレベルのものだったくらいです。 しかしその時は「早く生地化したものが作りたい!」と、とにかく必死だったのでそれが最大級の努力をした製品でした。その後、日傘に使えるよう改良を重ね、販売可能レベルの製品の開発には2年くらいかかりました。 初期のファブリック試作品。しわが強く残っており、販売可能レベルには遠い。 試作品で制作した服。生地が硬く、ごわごわした感触だった。 もっと生地らしいものを作りたい。柔らかく、軽くもしたい。しかも、放射冷却性能の高さを維持したままで。 しかし、産業用の素材と、日傘などの人が使うものに使用する素材とでは重要視されるポイントが全く違います。産業用のSPACECOOLとして製品化されているものとは完全に別物を作る必要がありました。 傘を作るには生地を三角形に切る必要がありますが、SPACECOOLのファブリックは切った状態で置いておくと、自然と丸まってしまいます。産業用のフィルムでは多少丸まっていても問題なかったものの、傘の製造過程では少しのカールが生産性に大きな影響を与えるので、重大な課題でした。「丸まった生地を広げながらでは縫えない。」と言われたのです。 そんなこと、全く想像していませんでした。 生地は大きな紙管に巻かれた状態で届けられます。丸まっているのは当たり前なのです。しかし、傘を製造する方々のためには必須の改良点だと考え、生地を作るときの加工条件を改善することで解決しました。 先端が丸まってしまったファブリック。黒の裏地が見えている。 その後も課題が明らかになる度に加工条件を工夫することでクリアしていきました。そして、放射冷却性能・耐久性はそのままに、皆さまにお届けできる形として完成させたのが、今回発売した日傘に使用している「ファブリックType2」です。 これはプロダクトとしてほんまにええやつができた! 正直、売れる手ごたえはありました。傘屋さんからの評価も高かったこともありますし、短期間で納得のいく改良できた部分が多く、やりきった感じがあるからだと思います。 今年の製品は自信をもって出せる。開発担当者として、そう思っています。 開発者の語る「SPACECOOL日傘 Type2」の特徴とは 何といっても、遮熱率がすごく高いことです。 他社の日傘と同様、遮光率と紫外線遮蔽率(UVカット率)の高さももちろん備えています。 詳細な数値だと、遮熱率76〜80%、遮光率99.99%以上、紫外線遮蔽率99.9〜100%です。 遮熱率は、太陽光による熱の流入をどれだけ抑えられるかという指標です。 こちらについては後で詳しくご説明します。 遮光率は光をどれだけ遮るかという指標です。パラソルなどは裏から見ると透けますが、SPACECOOL日傘Type2はほとんど透けず、むしろ真っ暗で見えないレベルです。 紫外線遮蔽率もほぼほぼ100%なので、完全紫外線カットといえると思います。 一般財団法人カケンテストセンターでのSPACECOOL日傘Type2の性能試験結果 自信をもってすごく高いと言った遮熱率ですが、一般的には実際に体感して比較しないとよくわからないものだと思います。 遮熱率とはどういった試験で測定されるかご存知ですか。図のように、生地の上からランプを当てて、裏面の温度上昇の度合いを測定します。 遮熱率は主に反射率で決まります。つまり、SPACECOOL日傘Type2の遮熱率が高いのは、反射率が高いからなのです。 一般財団法人カケンテストセンターウェブサイトより参照 遮熱率は、下記の表のように性能によって区分が定められています。現段階の指標では、「S65+」というのが評価基準の最高等級として設定されています。 遮熱性能がすごく高い遮熱生地でも45%〜60%となることがほとんどです。そのため、「S65+」という等級を取得できるだけでも、かなり性能がいい証明になります。 しかし、「S65+」という表記自体は、“遮熱率65%以上”をまとめた最高等級です。そのため、65%でも80%でも同じ「S65+」になってしまいます。 SPACECOOL日傘Type2は、評価基準の65%を10%以上も上回っていますが、これ以上の等級がないため65%の遮熱率を持つ製品と同じレベルとされてしまうのです。これがすごく悔しいですね。 JIS L1951のような実際の試験では、周囲からの熱の回り込みなどもあるため、遮熱率100%というのは現実的には非常に難しいと考えています。 一見すると“あと数%上げればよい”ように見えますが、実際にはそう単純ではありません。 エネルギー保存則があるため、熱の多くは吸収されます。遮熱率50〜60%程度までは、材料を変更するなどして性能を向上させやすいですが、76〜80%を超える領域になると材料変更では対処できず、“吸収される僅かな熱”を削り込む戦いになります。 「S65+」の評価を得るために調整をした測定結果の65%と、いかに太陽下で物体温度を下げるかという“熱設計”そのものを追いかけてきた結果の80%は、同じ等級の中でも全く違うものだと思っています。そのため、SPACECOOL日傘Type2に関しては「S75+相当」と言いたいくらいです。 現状定められている遮熱率区分。一般財団法人カケンテストセンター 遮熱性試験(JIS L 1951)より引用 SPACECOOLの日傘は、単に基準をクリアするだけではなく、“もっと熱くなりにくくすること”を目指して開発しました。 一般的な日傘は、太陽光を反射して遮熱します。一方でSPACECOOLは、それに加えて、吸収してしまった熱を“放射冷却”で外へ逃がす設計になっています。 なので、“ただ反射する日傘”というより、『熱を逃がす放射冷却日傘』というのが一番特徴を表していると思います。 大変だった。だからこそ、たくさんの人に届いてほしい この傘を製品として作り上げるまでにはたくさんの苦労がありました。冷却性能、耐久性、加工性、コスト…すべてが納得のいく製品に仕上げるのは本当に大変でした。 さらに性能を高めようと高品質の生地を使用することも考えましたが、そうすると1本5万円といった高額な製品になってしまう… このSPACECOOL日傘は、暑熱対策はもちろん、シンプルな傘なので老若男女関係なくおしゃれなものとして使ってほしいと考えています。だから皆さんに手に取っていただけるものにしたかった。でも遮熱・遮光の性能が高い分、一般的な日傘と比較すると少し高いかもしれません。それでも、とにかく使って涼しさを体感してほしい!かなり自信があるものができたので、たくさん使ってほしい!そう思っています。 また、使った方から改良案もいただきたいですね。この日傘をもっとよくしていきたいと思っています。